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HOMEベストコミック2008 > 三軒茶屋 別館(フジモリ様)レビュー
三軒茶屋 別館

三軒茶屋 別館

URL: http://d.hatena.ne.jp/sangencyaya/

マンガや小説の書評を中心とする多趣味なサイトです。今回の書評に関連する記事も掲載されていますのでご興味ある方は足をお運びください。
のろい屋しまい

ひらりん
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帯で西島大介鶴田謙二が推薦していますが、推薦に違わぬ傑作でした。

内容は、魔法使いのヨヨさんとネネさんがひらいている「のろい屋」を舞台にしたほのぼのドラマ。

まず、この作品が初めてのオリジナル作品、ということですが、本当?と疑いたくなるぐらい絵が綺麗です。本を開くと最初に「ゴチャゴチャしてるので普通のマンガよりゆっくり読んで下さい」と注意書きがありますが、確かに、1コマあたりの情報量が多いです。逆に言うと、1コマ1コマ眺めるだけでも飽きません。また、線が柔らかく、書き込まれていながらもゴチャゴチャしている印象を受けません。幼女はかわいらしく、大人の女性は色っぽくと当たり前ながらもしっかりと描き分けられています。

そして、特筆すべきは世界設定の緻密さ。1巻完結でありながら、舞台となる世界の地図や歴史、登場人物の家計図はもちろんのこと、主人公である二人の魔女の階級や魔法の概念など、それだけでRPGが1本作れるほどの設定が盛り込まれています。巻末の作者フォローでは作中に登場している小道具についての説明なども書かれており、全てのコマの全てのものに意味があるのでは?と思わせるほど練りこまれた世界観です。

ストーリィそのものは、「のろい屋」を中心としたほのぼのコメディなのですが、最初は登場人物の位置づけもわからず「??」となりながら読み進んでいくと思います。次第に設定が明らかになるにつれ、「ああ、このキャラはそういうことだったのか」など読み返したくなります。各話が少ないページ数なので若干駆け足で進む話もありますが、「花卓の騎士」などクスっとさせるパロディもあり、まさに「物語」を満喫できるかと思います。

物語に使われない舞台設定や世界観というのは、鰹節をたっぷり使った出汁のように見えないながらも物語を濃厚にします。そういった「世界」を味わいたい人、満喫したい人は必ずや満足できる一冊だと思います。今年のマンガの中ではベストに位置する本でした。オススメです。

FLIP FLAP

とよ田みのる
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不器用な高校生の恋愛を軽妙なボケと突っ込みで清々しく描ききった傑作 『ラブロマ』を描いた、とよ田みのるの最新作です。

普通だった自分を変えるため、高校卒業をきっかけに好きだった山田さんに告白した主人公深町ミチオ。山田さんの条件はただ一つ、ピンボールでハイスコアを出すことだった。

深町くんは山田さんの心をつかむため日夜ピンボールに励むが、次第にピンボールの世界に魅了されていき・・・、というお話です。

オビに「世界初(?)のピンボール・ラブコメ」と書いていましたが、確かにピンボールを題材にしたマンガ、しかもラブコメとなると珍しいです。しかしながら、読み始めると作品世界に引き込まれ、一気に読了してしまいました。

まずはなんといっても、ヒロイン山田さんのキャラ設定が秀逸です。いかにもな不思議顔(特に口)で、性格も不思議系。

ピンボールのことになると集中して他が見えなくなるというかなり変わった子ですが、キャラ造型がほんわかしてることもあり、なんとなく許せてしまいます。(もちろん、深町くんのツッコミあってこそかもしれませんが)

ストーリーそのものは前作『ラブロマ』を彷彿とさせる、ボケとツッコミのオンパレード。このへんのキレとテンポのよさは相変わらずで、非常に面白かったです。

ピンボールという題材ですが、マイナで静的でマンガにしづらいかと思いきや、巧く物語に取り込んでいます。*1深町くんのピンボールの上達に伴い、次第に二人の距離が縮まっていくという、「成長」が「恋愛の進展」に結びつくというラブコメの王道パターンであり、なんというか、安心して読めるなあ、と思いました。   また、ラブコメ要素のみならず、ピンボールを通じて「一つのことに集中すること、突き詰めることの楽しさ」ということを巧く描いていると感じました。

全一巻とコンパクトにまとまっており、前作『ラブロマ』 が好きだった人はもちろん、「ラブコメはちょっと・・・」という方にもオススメできる一冊です。

オトノハコ

岩岡ヒサエ
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さくら高校に入学した田辺きみは、廃部寸前の弱小合唱部に入部。部の存続をかけて合唱コンクール全国大会を目指す・・・という合唱部をテーマにした青春マンガです。

しかし、謎の宇宙人によって手を加えられたプラズマ太陽の光を浴びた人々は皆異様な姿の超人となってしまった。それがウルトラマンたちである。そして、その反面、怪獣となってしまった動植物もあり、さらにプラズマ太陽の光の因子は全宇宙に散らばった。つまり、全宇宙に「怪獣」が存在することになってしまったのだ。 「合唱」をテーマとしていますが、これは結構珍しいのかな、と思います。 「のだめカンタービレ」 の大ヒットでクラシック音楽に対する垣根は低くなっていますが、合唱はまだまだマイナなジャンルです。「合唱」というと「読書感想文」と同じく学生の頃に「無理矢理歌わされた」感を持っている人が多いのではないでしょうか。

しかし、合唱は器楽と異なり楽器など不要な、誰でも参加できる「音楽」です。

田辺が入部した時点では部員はわずか5人。しかし、みんな個性豊かです。

林部長は合唱にかける熱意は人一倍ですが、その行動は非常に怪しく、森先輩はしっかりしていますがピアニストのホトケこと畠先輩に恋しています。

同学年の鈴木詔子は中学時代バレー部に所属していたものの腰を痛め退部。しかしながら天性の美声の持ち主で、同じくバレー部のマネージャーをしている壇あさみは彼女の声にコンプレックスを抱いています。

途中入部する山根ユウも含め、合唱のパートによる性格分けのようにそれぞれのポジションがはっきりしています。
合唱は声が良ければいいというものでもなく、いかに声を合わせるか、と言う点も重視されます。そういう意味で、壇あさみが、声の良い鈴木詔子にコンプレックスを抱きながらも自らの役割を認識し自信を持つようになるところなどはグッときます。

「一人で歌っているのではない」

だからこその「合唱」なのです。

全1巻とコンパクトにまとまり、甘酸っぱい恋のエッセンスをまぶした青春マンガですが、ほんわかした作者の筆致もあり非常に良い読後感を残す、良質の一冊です。