この作品は遊郭で育った少年時代を振り返っての、ほのぼのとした回顧録風なタッチで描いていますが、そこには嘘も見栄も、妙な教訓めいたことも感じられず、ただ事実だけを淡々と書いている印象。正直です。
ただ、代表的短編「ラララの恋人」で見られる作者の鋭い人間観察眼や、ある種不可解な感情記号が、「遊郭」というどこか妖怪じみた場所に溶け込むことで、「ひんやりと暗く
ほのぼの」という、独自の雰囲気を醸し出しているのが一番の魅力。
人間を客観的に、正直に描写すれば、「明」や「暗」がくっきり分かれるはずがなく、
結構ぐちゃぐちゃなんやで、ということを勝手に学ばせてもらった気もします。
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