20年近く前の作品だけど、音楽もの漫画の一つの可能性を見いだせる作品。音を描くっていうのは非常に難しいんだろうけど、これは見事に音が伝わってきた。BECKに代表されるように、音の迫力を漫画記号と漫画的演出で描き出す、というやり口が一般的な描写法だろうけど、森脇真末味のこの作品は違っている。描写されたパーソナリティから音が伝わってくる。人間描写に拘る作家だからこそ痛い程音が聴こえる。
作者は漫画を描くことは日記を書くことと同じような感覚、とそういった意味の文章を他の作品のあとがきで寄せていますが、この作品もまさしくそういう気持ちの中で描かれた作品なのでしょう。
またまたBECKを比較に用いますが、ああいったサクセスストーリーの手合いではありません。少女漫画の媒体なので、やはり心情の変化や精神的な成長が軸になってドラマが展開される、という構図なのですが、それと音楽、バンド、という素材をうまく絡めて使えているのが秀逸です。なんだかよくある「かっこよさそうだからギターとマイク持たせました」っていうダサい安物少女漫画とはワケが違うので。
登場人物では水野に注目。冷静な判断力、鋭い物言いはなんだか冷たい人間のように彼をみせていますが。
ものすごいおせっかい焼きだからこその「冷静な判断力、鋭い物言い」。
問題児の主人公は水野以外のメンバーを
「みんなすごくやさしい。だけど自分はやさしい人間たちのなかでひとりぼっちだ」
「水野だけが自分の手の届くところにいる」と。
冷たくズバズバいう人は大切にしましょう。おせっかい焼きの憎めない人かもしれないですよ。