好き嫌いがはっきり分かれる作品なので、読む時は覚悟しましょう。
嫌いなら嫌いで黙殺してスルーすればいいので、そんな覚悟はいりませんが。
ただ好きになったときは、人生を狂わせる可能性のある作品。毒書ですよ!
日本人が浮かれ騒いだ80年代バブルの東京の片隅。忘れ去られたようにあるボロボロの
木造アパート。そこの元・共同便所をわずかばかり手を入れた小汚い部屋に住んでいる
蜂須賀さんという偏屈おじさんを中心に、同じアパートの住人で飄々とその日暮らしを
している久保田(男前キャラ)、同じくアパートの住人の東大志望の浪人生木村
(もさいメガネキャラ)。この三人の日々のどたばたを描いた作品です。
さて、上で書いた蜂須賀さんの小汚さっぷりにドン引きした人も少なくないでしょう。
私も正直最初はキッついなーと、読むのを途中放棄しかけました。が、
回を重ねるごとに「蜂須賀さんは小汚いが、そのワイルドさ故にモテる」という、
分かるような分かんないよーなエピソードが度々登場。
そういったエピソードのお陰で小汚さへの抵抗感が薄らいでいったり。
男性性のネガティブな部分を描いている漫画なんですが、それが自虐的で凄惨な
負の匂いのする作品とは一線を画していると思いました。泥臭い生活の中にあって、
誇りや夢をや粋を大切に生きる、メゲてなんかない、青臭く前向きな物語なんですね。
つまり、狩撫麻礼ワールドの陽の部分なんだろうと感じました。
例えば、同じ狩撫麻礼の原作でも、いましろたかし作画の「ハードコア」とか読んだら、
ちゃんと読んだ事無いけどあれは陰の部分だろう、多分狩撫麻礼を立体的に読解できそうな
気がしました。
狩撫は基本的に言ってる事、やってる事がずっとぶれないところが気持ちいい。
こういう大人がいることが嬉しいですね。
蜂須賀さんが狩撫の代弁たる名台詞で気持ちよく締める回もいいんですが、蜂須賀さんが、
その思想ゆえに苦悩して悶えて終わる回の方が私としてはぐっときました。
ある種の叙情があるんですね。たなか亜希夫の絵による演出力もかなりいけてます。
ボーダー達が敵視した価値観は、20年たった今でも変化してないような気がしてるので、
この作品はまだまだ現役な気がしますが、どうだろう。
鵜呑みにするには歳を取りすぎたので、狩撫麻礼自体を読解した方が面白そうだなぁと思ってます。
木村ラブ。大好きだ!
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