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書評

 



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力の在り方 (1)/榎本ナリコ 双葉社刊

今度の榎本ナリコは「センチメントの季節」を経て、次のテーマに進んだ、そういった印象を受けました。
 『気分の共感』のストーリーから、『答えの模索』のストーリーへの移行がみられます。

「センチメントの季節」は、もう戻らない過去、少年少女の美しさ、そういったものを失った己を儚む、というセンチメンタルな気分に浸れる傑作だったのですが、『失った栄光』への執念に次第にかられていく読後感はどうにもスッキリした気分になれませんでした。
少年少女時代が振り返るとすぐ後ろに輝いている年齢のせいか、リアルすぎて辛くなったものでした。「実は何もない自分」に気付いたとき、私は闘うことを選んだのですが、読めば読むほど過去の美しさに引きずられていくのです。

「力の在り処」では、そうした喪失感から開放されていく鍵が少しずつみえてきます。
この作品の中ではキャラクターがそれぞれに傷を負い、爛れた心で生きていたのが、それぞれが一緒にいることではじめて特別な『力』を持つようになる、という設定になっています。
 なぜ、『力』を持つようになったのか。それは虐げられてきた補完なのではなく、いっしょにいてくれる人がいるという歓びそのものである。作中にはそう描かれています。
 決局、人間がなにか力を発揮する瞬間とは、そういうときではないのでしょうか。

 

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