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書評

 

特集

                                 

「なんで今更フランク・ザッパ?」

 

 

ご覧になっている方はこう思われるかもしれません。表向きは、大量にザッパのLPを買い取ったから、というのが今回の特集を組んだ動機なんです。でも、こう言ってしまったら身も蓋もありませんよね。

勿論、件のおっさんはなかなか興味深い人物だし、それ以上に彼の音楽はあらゆる意味で独創的です。今尚根強いファンが世界中に存在しているわけですから。

実際は、ここらで一丁世代を越えた再評価を試みるのも面白かも、といった下心が無かったわけではありません。(控え目に野望を語ってみたり・・・)

  

 

最初に彼を語る上で欠かせないのは、そのトリックスター的言動です。

まず、自身の曲が差別的だという指摘への、彼の反論から紹介しましょう。

 

 

  「俺の楽曲の歌詞が、女性をバカにしているって?

   バカをいうな! 俺の歌詞は、男女ともに平等にバカにしてるだろ?」

                                       

こんなことをのたまう方なわけで・・・。正直な処興味沸いてきたでしょう?

他にも、ザッパに見出されたミュージシャンはとても多い。私が把握している数人ですら凄い面子ばかり。

 例えば

 キャプテン・ビーフハート (サイケロックの第一人者。ご存知『ゆらゆら帝国』は彼の影響を強く受けている)

 アリス・クーパー (グラムロックを代表するミュージシャンの1人)

 スティーブ・ヴァイ (超絶技巧派ギタリスト。個人的にはちょっと・・・うむむ。)

 この3人も、言ってみればザッパの門下生だったわけなのです。

 意外なところで彼の影響力が視てとれますね。   

 

しかし彼を評価する上で最も重要なのは、やはり彼の天才的(変態的?)なインスピレーションとテクニックでしょう。あらゆるジャンルを越境し、全てを自分流に仕上げてしまうセンスは他の追随を許さない勢いがあります・・・

とりあえずここで、彼の初期オリジナル作品をいくつか紹介してみましょう。

 

                                     

We're Only in It for Money  Uncle Meat Burnt Weeny Sandwich 
1968年発表 1969年発表 1969年発表
ビートルズの「サージェント・ペッパーズ~」をパロディ化した内ジャケットが有名。諸事情により、外ジャケには使えなかったらしい。内容は至ってPOP。      マザーズの未完成映画のサントラ盤として発売された2枚組アルバム。ストレートなロックとジャズフィーリングの絶妙なバランスが評価高し。やや難解な部分もあり、中級者向けか。  リズムセクション、ボーカル、どれを取っても上出来。ザッパ率いるM.O.Iなるバンドの演奏も最高に近い。迫力でごり押し。                           
総合評価 ★★★★☆ 総合評価 ★★★☆☆ 総合評価 ★★★★☆

 

 

 デビューしたばかりのザッパ率いるバンド、マザーズは、次から次へと作品を発表します。1967-1969の間に製作されたアルバムは4作。しかも全米ツアーの合間にそれらのレコーディングを行っていたというのだから、驚くべき創作意欲です。

しかしザッパは早くも自らのバンドに限界を感じ始めます。1969年にマザーズは解散。彼は新たにホット・ラッツ・バンドを結成、1971年にはフィルモア・イーストでジョン・レノン&オノ・ヨーコとの共演を行っています。まさに破竹の勢い。

 

けれども彼の音楽活動は決して順調だったわけではないようです。ツアー中、バンドは数々の事故に巻き込まれます。

 

 

フィルモア・イーストでライブが行われたのと同年、モントルージャズフェスはザッパの演奏中、会場で火災が発生します。この事故でホット・ラッツ・バンドの機材はほとんど焼失してしまいました。

 

モントルーでの火災時、湖の対岸で火災を目撃したのが実はディープ・パープルで、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」はこの時の光景からインスピレーションを受けた曲だそうですが・・・ロック史的には面白い話ではあるけれど、高価な機材が焼けてしまった彼らの心境を、ついつい慮ってしまいます。

 

 

さらにこの火災から6日後、ザッパはロンドンでのコンサート中ステージから転落、左足を骨折。

 

 

しかし数々のアクシデントをも創作の糧にしてしまうエネルギーが、ザッパにはありました。自宅療養中、スタジオワークの可能性に気が付いた彼は、以降ツアー以外はスタジオに篭って作業するようになります。

この事故を転機として彼の音楽は、ステージでの即興的な側面、そしてスタジオ内での実験的な側面を併せ持つ独創性を獲得してゆくのです。

次は70年代の代表作を挙げてみましょう。

 

 

                        

 

 

 

 

チャンガの復讐 Grand Wazoo One Size Fits All
1970年発表 1972年発表 1975年発表
ザッパの作品中、最も解り易い作品の1つ。どことなくオリエンタルなジャケットが面白い。ハードロック調な”Tell me you love me”等、ポップ色強め故入門には最適か。 ビッグバンドをバックに展開される叙事詩(?)フランク・ザッパ流プログレッシブ・ロック。演奏レベル高し。  フリー・インプロビゼーションのおいしいとこ(ワウペダルの使い方等)をバッチリおさえたInca Roadsを始め、全曲通してサービス精神溢れるアルバム。それにしてもこの時期の作品はどれもレベルが高い。 ザッパ最盛期。 
総合評価 ★★★★☆ 総合評価 ★★★★☆ 総合評価 ★★★★★  

 

     

 

1979年、ザッパ・レコード設立後第一弾のアルバム「シーク・ヤブーティ」は、全米アルバムチャートの第21位まで上昇。内容的、売り上げ的にも彼の代表作となります。そして以降80年代後半まで、彼の創作意欲は衰えることはなく、コンスタントに作品を発表し続けます。

 

しかし1988年、ワールドツアーの真っ最中、ザッパは自分がガンであることを知らされるのです。

 

以降彼は死期を悟ったかのように、過去の作品を整理し、再編集する作業に没頭。

そして最後のアルバム「イエロー・イシャーク」を発表した1993年、この世を去りました。

 

 

フランク・ザッパは世界的な大スターではありません。しかし彼は、死ぬ間際まで音楽を愛し、世界各国で止むことなく続けられる殺し合いを憂い、大国のエゴイズムを批判し続けました。

 

 

例えば、アメリカ合衆国における共和党政治に対して、ザッパは辛らつでした。彼はこんなことを言ってます。

 

「戦争はやめさせるべきだ。ありゃ貪欲な戦争だ。すべての戦争がそうなんだろうけど。十字軍だって、おんなじだよ。でも、あんなやり方じゃ、うまくいかない。戦争をやめさせることができるのは、大統領だけだ。もし、自分の理想どおり、だれかにこの国を治めてもらいたいと思っているなら、そして、あんたが反戦運動家で、平和を実現したいと思うなら、実際に力となってくれる人物を、あそこに送り込め。そのため尽力する人間を、議会へと送り込むんだ。・・・」

 

富や名誉にはあまり関心を持たず、且つ自分の人生を貫くことができた彼は、ある意味宗教的な存在といっても過言ではないでしょう。しかし、決してザッパは聖人ではありません。混沌とアナーキーを振りまく強烈なミュージシャンだったのです。

 

最後に晩年の代表作を紹介します。

 

 

 

シーク・ヤブーティ フランチェスコ・ザッパ イエロー・シャーク
1979年発表 1984年発表 1993年発表
パンクからバラード、そして変態ポップまで、ありとあらゆる要素が詰まった怪作。全米アルバムチャート21位。"Broken Hearts Are For Assholes" がお奨め。 1763-88年にイタリアで活躍した、ミラノ出身のチェロ奏者、フランチェスコ・ザッパ(?)の室内楽を、シンクラヴィアによって現代によみがえらせたという作品。ザッパ作品のなかでも1,2を争う迷作。 残り少ない生命力を燃え立たせて完成させた遺作。ライブは6チャンネルステレオで行われたというから驚き。最後の曲が"G-spot Tornade"って・・・。やはり一筋縄ではゆかない人だ。
総合評価 ★★★★★ 総合評価 ★★☆☆☆ 総合評価 ★★★☆☆

 

 

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